最初に少しややこしい話をしなければいけませんが、「国民生活金融公庫」(略称:国金)として長年機能していた機関は、2008年10月から、「日本政策金融公庫」(略称:日本公庫)に統合されて、現在は存在していません。
戦後間もない昭和24年に「国民金融公庫」が誕生し、「環境衛生金融公庫」と統合して1999年に生まれた「国金」ですが、更なる統廃合で9年後に今の「日本政策金融公庫」(日本公庫)になっています。
日本公庫と一般市民との関わり
現在機能している「日本政策金融公庫(日本公庫)」は、主に次のような融資を行なっています。
- 中小企業の起業・経営・再建に関する融資
- 農業・漁業に関する企業や経営に関する融資
- 環境衛生分野の起業・経営に関する融資
- 中・低所得世帯向けの教育に関する融資
最後を除けば企業者向けの融資を行なっている国の融資機関で、最後の教育に関する融資はお子さんを就学させたい低所得~中所得世帯への支援の意味合いで使われる融資です。普段サラリーでお勤めの方には、利用する機会はないかもしれませんが、中小企業や農業・漁業関係の起業者には大きな存在となっています。
消費者金融や銀行の事業者向けローンの特徴
一般的によく知られている事業者向けローンといえば、身近にある消費者金融の事業用ローンやビジネスローンでしょう。かつては「商工ローン」とも言われたものがありますが、度重なるバッドニュースで今では「ビジネスローン」と呼ぶようになっています。
その事業者向け「ビジネスローン」の大きな特徴は…
- 起業(創業)時の融資は難しい(行なっていない)
- お勤めの方向けカードローンと金利が殆ど同じ
- さほど綿密な事業計画や帳簿類を提出しなくても、実績さえあれば借りやすい
などとなっています。これから起業する方向けというよりは、最低でも2~3年度分の実績を挙げて、決算書などで安定した収益が出せている事業者向けの融資が多くなっています。
最後に書いたように、店舗の設備に関しての綿密な計画書や図面などといった書類までは求められないものもありますが、基本は「安定した収益を挙げていること」が前提になっていると考えたほうがいいでしょう。
また、金額的にも大型融資というよりは運転資金をカードローンのように自由に借りたり返したりできるという「困ったときに助かる」といった性質のものと考えることができます。
日本公庫の事業者向け融資の特徴
一方の日本公庫では、これから起業する方や再建を目指す方、衛生に関する事業を展開する方などに向けた支援的融資を行なってくれる制度があるのが特徴で、設備資金用・運転資金用それぞれに相談をすることができます。
しかし、一方で厳し目の条件が付いている場合や、新規開業に向けた綿密な事業計画の提出など、消費者金融のビジネスローンよりもしっかりした計画書類の作成と実行が必要とされています。
例えば、「新規開業資金」についての条件や金額を見てみると…
【利用条件】次のどれかに該当すること
- 今勤めているのと同業種の事業を創める人で、「今の企業に6年以上勤務している」か「同業種で通算6年以上勤務している」
- 大学などで修得した技能と密接な関係の事業を創める人で、その業種に2年以上勤務している
- 技術やサービスに工夫を加えて、多様なニーズに対応する事業を創める
- 雇用の創出する(人を雇う)事業を創める
- 上のどれかをクリアしていて、事業開始から7年以内
【融資限度額】7,200万円(運転資金は4,800万円)
【返済期間】・設備資金は15年以内(据置期間3年以内) ・運転資金は5年以内(据置期間は6ヶ月以内)
【金利】基準利率は3%未満。さらに特別な事情がある場合には特別利率が適用される。
といった具合です。
金利が3%未満なのは、その融資額の大きさからくる部分も充分に考えられます。ビジネスローン(特にカードローンタイプ)のような比較的少額を、自由に繰り返し借りるというスタイルのものではなく、事業計画に基づいて算出された融資額をドンと借り受けて、設備投資や運転資金に利用するのが基本姿勢となります。
(⇒用途自由な借り入れは事業には使えない?)
ビジネスローンと日本公庫の使い分け
今まで述べてきたように、日本公庫からの融資は綿密な事業計画に基づいて、比較的多額の融資を受けたいときに考えるもの。また、新規開業でまとまった資金が必要な方にお勧めの制度です。
一方、消費者金融などのビジネスローンは、何百万・何千万といった融資は必要ないが、運転資金として数十万を自由に借りれるようにしたい方にお勧めの資金調達ローンとなります。そして、新規ではなく2~3期分の安定した経営をしていることが条件になることが多いことも忘れてはいけません。
それぞれに特徴が異なっているビジネスローンと日本公庫の融資制度。自分の事業はどちらが向いているのかをよく考えて申し込み先を選ぶことが、経営者の手腕として求められます。
【参考ページ】
自営業が融資を受ける場合のヒント